図書館に行こうよ ―図書館職員の図書館的日常―      228
 
     
  秋の夜長に読む怪談  
     
 

 いまだに夏の延長線上にいる気がしますが、気づけばもう秋分の日。暦は着実に進んでいるのですね。皆様は秋といえば、で何を思い浮かべるでしょうか。読書・芸術・食欲と色々ありますが、私にとっての秋は「怪談」の季節です。そこで、図書館所蔵の本から、秋といわずYouTubeで怪談をはしごして、気づけば深夜なんてこともよくある私が、私見によるおすすめを紹介します。それではいきましょう。


✿絵本

『帰り道』羽尻利門/絵

 いつもの帰り道、ふと目に入った脇道に入ってみると?―ここに出るんだ。そこからどんどん目についた脇道に入っていくと…。他にも怖い絵本はありますが、私の中ではこの本が一番怖かったです。結局何だったのか、答えがないところも怪談らしくて好きです。あなたはどんな解釈をするのでしょうか。


『ざしきわらし えほん遠野物語』町田尚子/絵

 遠野物語×京極夏彦=最高!という私感しかないお勧め本です。そんな「えほん遠野物語」から一冊挙げるならこの本でしょう。町田尚子さんの絵も物語とあっていてすごく好きな絵本の一冊です。遠野物語の座敷童衆の話を知っている方も、そうでない方もご一読ください。絵があるとまた違う雰囲気を楽しめます。他の絵本の所蔵もありますので、そちらもぜひ。


✿家の話

『わざと忌み家を建てて棲む』三津田信三/著

 編集者・三間坂が作家・三津田の元に持ち込んだのは、曰くある物件を継ぎ接ぎした「烏合邸」と、そこに棲んだ者達がつけた記録。この家を建てた目的とは何か?その真相は?幽霊屋敷の2作目です。このシリーズはなんといっても余韻がすごいです。現実と物語が交ざりあうような不気味な感覚が、本を閉じた後も拭えませんでした。恐怖に耐性のある方は、ぜひとも読破していただきたいです。


『残穢』小野不由美/著

 始まりは畳を擦るような音がする、という手紙が作家の“私”の元に届いたことだった。やがてその現象は違う部屋でも起きていたことが分かり、疑問に感じた二人は怪異の元凶を探るために土地の歴史を辿っていく。果たして怪異の正体とは?この本の怖さは、全て創作なのかがはっきりしないところと、我が身にも起こり得ると思えることでしょう。この二つの要素が恐怖をじわじわ煽ります。同時刊行の『鬼談百景』ともあわせてぜひ。


『営繕かるかや怪異譚』小野不由美/著

 営繕かるかやを営む尾端という青年が、それぞれの家で起こる困り事(怪異)を解決する(折り合いをつける/共生していく)ために、家の修繕をする。ざっくり言うとそんな話です。怪異は怖いですが、救いがあってほっとするそんな本です。現在は3巻まで刊行されています。


✿山の話

『山の霊異記』安曇潤平/著

 登山者や山に関わる人々から聞き集めた、山岳怪談集。登山をされていただけあって、山の描写が詳細で、登場人物と一緒に登山をしている気持ちになります。なので「すべてが実話ではない」とのことですが、そうは思えないほど話に現実味と説得力があって、読み応え抜群です。このシリーズは5巻まであります。


『山怪』田中康弘/著

 山といえばこちらも外せません。こちらは小説ではなく「耳袋」や「遠野物語」に近いです。山で働き暮らす人々から聞いた、山で起こった不思議な話をまとめた体験談集です。怖い話というよりは、怪しい話の方の怪談です。囲炉裏端で語られる昔話のような素朴な雰囲気があります。


 いかがでしたか。他にも紹介したい本がまだまだありますが、今回はここまでです。少しでも気になった本がありましたら、ぜひ手に取ってみてください。そして、怪談好きになっていただけたら嬉しいです。(花矢 藤)