図書館に行こうよ ―図書館職員の図書館的日常―      239
 
     
  震災と文学  
     
 

 1月のコラムでも防災関連本の紹介をしていましたが、お正月の大地震のあとで迎えた3月。10年以上が経過したとはいえ、やはり3.11のことが思い出されます。そこで今回は「震災後文学」という観点から書いてみたいと思いました。
 記憶に新しいところでは、仙台市で書店勤務の傍ら執筆されたことが話題となった芥川賞受賞作『荒地の家族』(佐藤厚志/著)が有名ですが、調べてみると実に沢山の作品が生み出されていることが分かります。文学作品に限らず、個人的におすすめの作品を新旧とりまぜてご紹介します。


『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている──再生・日本製紙石巻工場』(佐々涼子/著)
 東日本大震災で被災した日本製紙・石巻工場。壊滅的な被害状況にありながら、工場長は8号抄紙機(通称8(ハチ)マシン)の半年復興を目標に掲げます。この本は、8マシンが奇跡的な復興を遂げるまでを追ったドキュメンタリーであるのと同時に、我々が日頃何気なく手にしている本の紙が、どこでどのようにして作られているかに着目させてくれる本でもありました。
 佐々氏の緻密で丁寧な取材と圧倒的な筆力。読んでいると現場の空気感が手に取るように伝わってくる傑作ノンフィクションです。


『想像ラジオ』(いとうせいこう/著)
 深夜2時46分、津波に流され、海沿いの小さな町を見下ろす杉の木のてっぺんで目覚めた男性は、想像力の中だけで聞こえるラジオ「想像ラジオ」のオンエアを始めます。実はこの男性(DJアーク)は既に亡くなっているのですが、このラジオを使って生きているはずの妻子に想像の中で呼びかけているのです。「想ー像ーラジオー」東日本大震災を背景に、生者と死者の新たな関係を描いた物語です。


『復興の書店』(稲泉連/著)
 東日本大震災で大きく被害を受けた地域の書店が、どのように営業を再開していったのかを描く復興ルポルタージュです。印象深いのは、被災地の多くの方々が、食料や水などの生活必需品を求めるのと同じようにして、書店にも再開と同時に詰めかけたということです。大変なことが起こっているその最中でも、人は本(活字)を求めるのだということに驚きと嬉しさを感じるエピソードでした。


『みやぎから、』(佐藤健/著 神木隆之介/著)
 七夕飾りづくり、廃線となった鉄道の運転、伝統的なだるまの絵付け…。佐藤健と神木隆之介が宮城県内を巡り、食や伝統、産業、ものづくりなど、様々な魅力を体験して歩きます。その中で地元の人との交流を通して、震災当時の話や郷土への想いを聞いていきます。写真が多めのビジュアルブック。読むと訪ねてみたい場所が見つかるかもしれません。


『続きと始まり』(柴崎友香/著)
 「あれから何年経ったのだろう。あれって、いつから?どのできごとから?」。日本を襲った二つの大地震。未知の病原体の出現。誰にも流れたはずの、あの月日…。別々の場所で暮らす男女3人の日常を描き、蓄積した時間を見つめる、長編小説。
 この本は未読なのですが、コロナ禍と2つの震災、これらが合わさってどんな物語になるのだろう、と興味深く、おすすめ本として選んでみました。

 ほかにも挙げきれないくらい、多くの方が震災を文学の形で残しています。今回ご紹介した本は全て大館市立図書館で借りることができますので、もしよろしければご一読ください。(栗盛・西)